2018年9月22日(土)・23日(日)・24日(月|祝)に開催された「紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー」は僕にとって記憶に刻まれた3日間でした。
目をつぶると紀北町の自然豊かな光景や農業体験、美味しい海や山の幸、そして紀北町で出会った「ひと」との交流がよみがえります。
「紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー」では紀北町の「1次産業の大変さとやりがい」を身を持って体験する中、溢れる「ひとの魅力」が「町の魅力」なのだと改めて気づかされました。
ツアーを終えて、僕は三重県各地の魅力的な「ひと」、日本中の魅力的な「ひと」にもっと会ってみたいと思うようになりました。
その気持ちは今も変わらず、日々の原動力になっています。
あなたの町にはどんな魅力的な「ひと」がいますか?
紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアーとは
紀北町の若手第一次産業者有志で結成される「海・山こだわり市」実行委員会が主催する職業体験型のツアーです。
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「海・山こだわり市」メンバーと直接お会いして、交流をしながら第一次産業の厳しさや魅力を体験できます。
参加者は県内外から集まり、年配の方から大学を卒業したばかりの若者まで、年齢・性別・職業もバラバラのメンバーが集まりました。
ちなみにツアー参加料は10,000円です。
紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー スケジュール
「紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー」は行程表の通り内容は盛りだくさんです。
※.行程表以外にもツアー参加者との交流やお世話になった民宿「うなばら」、民宿から歩いて行った「ふるさと温泉」と記載されていない項目があります。
何度でも伝えよう。紀北町の「ひと」の魅力
「紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー」でもっとも魅力に感じたのは「ひと」です。
紀北町の「ひと」と交流する中で
- 会う方々のいきいきとした「表情」
- 町や地域、仕事に対する強い「意思」
- 僕らに対して快く受け入れてくれる「人柄」
と参加者が自然に溶け込めるコミュニティの輪が紀北町にはありました。
濃厚なハードスケジュール(いい意味で)によって、交流する「ひと」が変わりがわりであわただしい中でしたが、どこを訪れても居心地が良い。
どこを訪れても「また来たいな」と思えるのは、よく考えるとすごいことではないですか?
3日間通してお世話になった海・山こだわり実行委員会の上村さん。
カヌーを積載した車を運転し、ツアーのいたるところでライフジャケットを持って登場しました。そして自然や食材、「ひと」のお話を楽しそうにされます。紀北町のことが本当に大好きなんだなぁと誰もが感じる方です。
「奇跡の清流 銚子川」のほとりにあるキャンプ場「キャンプinn海山」で出会った理事長の田上さん。
初日にカヌー体験をさせていただいた際、僕を含む男性参加者の呼び名が問答無用で「お父さん」でした。
カヌーに乗り込む際に、ハスキーでよく通る声で「お父さんは後ろに乗り!」と声をかけられます。
キョトンとすると「あぁ、ごめんなぁ。僕からしたらみんなお父さんなんさ。」
という言葉に思わず笑ってしまいました。
とても気さくで終始笑顔で一緒にいるのが楽しくなってきます。
銚子川でのカヌー体験を何倍も面白くしてくれました。
きいながしま古里温泉がある古里地域の「民宿うなばら」でお世話になった女将さん。
豊富な紀北町の海の幸を中心にした料理の数々がほんとうにおいしくて美味しくて・・・・
中でも驚いたのは、「マンボウのコワタ(小腸)」です。
参加者一同、あのマンボウ!?という反応で初体験者続出で、僕も「マンボウのコワタ」は初体験でした。
女将さんが「特別に用意できたんさ」と食卓に出してくれた珍味で、おそるおそる食べるとコリコリと触感が楽しくて美味しい。
とっても貴重な食の体験をさせてもらいました。
「ムツがね、今年は小さいのよぉ。いつもはもっと大きいんやけど・・・ムツのおかわりあるからね!」
「ムツのおかわり」なんて言葉をはじめて聞きました。
まるで、おばあちゃんが孫を溺愛している印象を受けて、気を張ることなく、みんな自然にくつろいでいました。
どこを訪れても本当に良い「ひと」たちばかりです。
そして・・・キャラが立っている。
何度でも言いましょう。
紀北町はやっぱり「ひと」の魅力で溢れています。
職業体験レポート 紀伊ファーム(路地野菜就業体験)
ツアーの中で最も長く過ごして印象深かったのが、「奇跡の清流 銚子川」が近くで流れ、広々とした畑が広がる「紀伊ファーム」での職業体験です。
取り組んだのは「にんにくの種作り」と「にんにくの植え付け」です。
今まで何気なく食べていた「にんにく」。
紀伊ファームでの体験によって、「にんにく」が僕にとって特別な野菜に昇華しました。
紀伊ファームでの就業体験レポートを読むことで
ポイント
- 「にんにく」の種の秘密
- 「にんにく」の植え方
- 「にんにく」に限らず農業の大変さ
- 「にんにく」に限らず農業の楽しさ
がわかりますよ。
紀北町にUターンで専業農家になった「紀伊ファーム」石倉至さん
職業体験でお世話になった「紀伊ファーム」代表の石倉さんは、もともとは大学で農学を学んだ研究者でした。
就職をされて仕事をする中で学生時代から抱いていた農業をしたい気持ちは変わらず、
「○○先生・・・農業が・・・農業がしたいです」(想像)
と決意したそうです。
決意後は行動あるのみで、アメリカ農業研修などを経て、生まれ育った紀北町で専業農家として独立をされました。
「元気な野菜を作り、食べてくれた人たちを元気にしたい。自然環境への荷の少ない持続可能な農業をしていきたい」
思いを持ち、「にんにく」や「かぼちゃ」、「さつまいも」などの野菜を育てています。
タオルを頭に巻いて準備完了・・・さぁ始めようか。
農業のお手伝いをするのは、いつぶりだろう。
小さい頃はボーイスカウトの活動や、学生の頃には環境NPOでの活動で農業を手伝う機会もありましたが、社会に出てからは機会をあまり作れていなかったとしみじみします。
頭にタオルを巻き、手袋、長靴を装着して、準備を整えた終えた僕らを「紀伊ファーム」のみなさんが迎え入れてくれました。
石倉さん「うちではにんにくの種作りと植え付けをしてもらいます。地味な作業ですが頑張りましょう。」
天候にも恵まれ、空は気持ちのいい青空が広がっています。
開けた土地でそびえ立つ山々に見守られながら、にんにくの種作りがはじまりました。
ミッション1 全てのにんにくを1片にせよ!
カゴいっぱいに用意されたスーパーでそのまま売っていそうな、まさに思い描くようなにんにくが目の前に現れました。
一体これをどうするのだろう?
石倉さん「種はこのにんにくの1片です。にんにくの1片を植えると、僕らが慣れ親しんでいるにんにくに育ちます。形がぷっくりと大きいものを青色のカゴ、小さいものは黄色のカゴに選別してください。」
石倉さん「種に使うのは青色のカゴのものです。黄色のカゴのものは青色のカゴのものがなくなったら使う種になります。」
つまり
- にんにくを手に取る
- 指に力を入れて、ぱきっとにんにく1片にする
- 大きければ青色のカゴ、小さければ黄色のカゴへ入れる
3ステップの作業ですね。
石倉さん「また、1片だと思っても凹みがあって実は2片というものも多いので注意してください。必ずにんにく1片にしてくださいね。」
参加者「なんで2片だといけないんですか?」(何かどこかで聞いたような台詞)
石倉さん「2片を一箇所に植えてしまうとにんにくが育ちにくくて、良いにんにくできないんです。そのため、植えた後から引き抜く作業が必要になって、とっても大変なんです。」
話によると1片にする機械もあるそうです。ただ、圧をかけて片にするので手作業よりも雑な仕上がりになってしまうとのこと。
石倉さんたちにそんな二度手間をとらせるわけにはいきません。
そこから黙々とにんにくを1片にする作業がはじまりました。
ツアー仲間と手と同じくらい口を動かしてしまいつつも、常ににんにくを1片にすることに専念します。
にんにくを1片にする作業・・・地味に大変です。
特に1片っぽい2片は曲者で出くわす度に右手の親指や人差し指に力が入ります。
石倉さんたち、3人だけでこの作業をすると3日間くらいかかる時もあるそうで、僕たちが来てくれたことは大変ありがたいという言葉をもらい、俄然やる気をでました。
期待に応えるべく作業は続きます。
僕と一緒にペアを組んでいた名古屋からお越しのみっきーさん、途中から取材にきた記者も参戦し、にんにく1片を大量に作りました。
他のペアも合わせて青色と黄色のかごが、にんにく一片で埋め尽くされていきます。
にんにく1片作業はお昼休憩を挟んで13時くらいまで続きました。
ミッション2 にんにくの種を土に埋めよ!
お弁当を食べて鋭気を養ったあと、カゴいっぱいの「にんにく1片」を持って、畑に移動します。
畑には既に黒いポリ袋が丁寧に土に被せてあり、ゴルフボールくらいの穴が空いていました。
にんにく1片をおそらくここに突っ込むのだろう・・・
参加者は穴を見据えて闘志を燃やします。
石倉さん「それでは穴の空いたところに、作ってもらったにんにくの種を植えていきましょう。」
参加者は「酔拳の蛇の構え(勝手なイメージ」で穴に狙いを定め、にんにく1片をズボッとテンポよく植えていきます。
土はふわっと耕してあるので気持ちがいい。
ただ・・・調子に乗っていると土の中に潜んだ「石」の反撃を受けるので注意してください。
大変なのは、やはり身体の態勢です。
立ったままだと腰が痛かったので、試行錯誤の結果、膝をついて植える方法を生み出しました。
やだ、もうズボンが汚れちゃう・・・なんて考えもしません。
テンポよく植えていると、にんにく1片っぽい2片が紛れこんでいます。
やはり、人間ミスはあるものです。
しかし、にんにく1片っぽい2片が多いと
「誰や・・・にんにく1片っぽい2片を紛れこませたのは・・・」
と指先に入る力が強くなりました。
サンサンと降り注ぐ太陽の下での、にんにくを植えのを中断して、にんにくの種を作るのはとても非効率です。
にんにくの種作りには丁寧さが重要だと痛感します。
ボーナスミッション トラクターで紀北の土を耕せ!
にんにくを植える作業も終盤に入り、石倉さんの計らいでトラクターに試乗させてもらいました。
レバーやら、スイッチやらいっぱいある・・・
操縦方法を教わりながら、ギアをガコン!と入れて、いざ出陣!!
オフロードの土の上を耕しながら突き進んでいく、力強いトラクターに初試乗で感動しました。
当たり前のことですが、
- 漁師さんは船
- 土建屋さんはユンボ
- 農家さんはトラクター
など、僕らが知らないだけで様々な機械が、世の中を支えています。
石倉さんのトラクターがにんにくを植えた「ふわふわの土」を作ってくれていたんですね。
紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアーを終えて
農業に限らず、「紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー」で体験をした1次産業の仕事は想像通り、地道で大変な作業でした。
ただそれ以上に、紀北町での1次産業は、大自然の中で働く魅力の一端を感じとれた気がします。
実は「紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー」の1ヶ月後に、紀北町のキャンプinn海山で2ヶ月間の短期就労をさせていただきました。
「紀北町魅力・ときめき一次産業体験ツアー」の参加から、出会った「ひと」がつなげてくれたご縁です。
2ヶ月間を紀北町で過ごした後も、まだまだ魅力は尽きず、むしろまだ見ぬ紀北町にますます興味を持っています。
「紀北町ってええとこやよ」
友人に話すときに思い出していたのは、紀北町の「自然」に「食」に、そして出会った「ひと」たち。
紀北町に限らず、日本全国や世界中にある町の魅力に欠かせないのが「ひと」でしょう。
僕に限らず、あなたの記憶の中の「ええとこ」にはきっと魅力的でときめく「ひと」で溢れているんでしょうね。
後日談 紀伊ファームで育った「にんにく」をいただきました。
2019年5月頭に紀伊ファームの畑を訪れました。
にんにくの種である「にんにく1片」は見事に育ち、青々とした畑が銚子川のほとりに広がります。
代表の石倉さんに、にんにくをいただきました。
生で食べるならすりおろして醤油に入れたりするのがオススメです。
パスタなどで使うなら、乾燥させた方が良いというアドバイスのもと、早速干してみました。
干す場所によるのでしょうが、乾燥を終えるのに2週間くらいかかりました。かかり過ぎですかね。
乾燥を終えたにんにくは、美味しいパスタに生まれ変わりました。
パスタを食べながら、にんにく1片を植えた時間を思い出します。また、紀伊ファームに立ち寄ろう。