クラウドファンディングをきっかけに、ひとつの新しいお菓子に出会いました。その名も「モルトフィナンシェ」。伊勢のクラフトビールメーカー〈伊勢角屋ビール〉で生まれる副産物「麦芽かす」から作られた、少し特別なスイーツです。
※.当記事はクラファンリターン品の紹介になります。
きっかけはクラウドファンディングから

モルトフィナンシェを企画したのは、食品ロス削減などに取り組む「ともしびマルシェ株式会社」さん。クラウドファンディングで商品化プロジェクトが立ち上がり、「捨てられてしまう素材から新しい価値をつくる」という挑戦に共感し、クラウドファンディングで支援しました。
クラファン終了後に届いたフィナンシェは、袋を開けた瞬間からやさしい甘い香りが広がり、しっとりとした質感。「どんな味わいなんだろう」と、わくわくしながらひと口いただきました。
やさしく香るモルトの風味

モルトフィナンシェを口に運ぶと、とてもしっとりとした口当たり。ふわっと広がるモルトの香ばしさが心地よく、甘すぎず軽やかな後味が残ります。噛むたびにホロっとほどけるような食感で、ついもうひとつ手を伸ばしたくなる味わい。麦芽かすというと少しクセがありそうに思えますが、そんな心配はまったくありません。
むしろ、モルトならではの香ばしさが上品な深みを生み出していて、一般的なフィナンシェとはひと味違う「やさしさ」と「個性」が感じられます。「優しいけれど芯のあるお菓子」という表現がぴったりでした。
麦芽かすの栄養成分にご注目です

麦芽かすには、食物繊維や鉄分が豊富に含まれています。薄力粉と比べると糖質は約90%減、食物繊維は約21倍、鉄分は約28倍。「体にもやさしい素材」でありながら、これまで十分に活かされてこなかったそうです。そんな素材に光を当て、「おいしいお菓子」に仕立てた――その発想こそ、ともしびマルシェさんの挑戦の原点でした。
もったいないを価値に変える挑戦

伊勢角屋ビールといえば、クラフトビール好きの間では全国的にも知られる存在です。その製造過程で大量に発生する「麦芽かす(モルト粕)」は、これまで家畜の飼料や肥料として再利用されてきました。とはいえ、その量は決して少なくなく、食品ロスの観点からも課題の一つになっています。
ともしびマルシェさんが目指しているのは、単なるスイーツ開発ではなく、地域の資源を循環させる「新しい仕組み」をつくること。伊勢角屋ビールと協働しながら、廃棄物を減らし、新しい価値を生み出す取り組みを進めています。
思い返せば、三重県内でも似たような試みが少しずつ広がっています。たとえば、柚子の皮を活用した製品づくりや、水産業では規格外の魚を新しい加工品として再生させる動きもあります。
「廃棄されるものを資源に変える」――そんな考え方が地域の中で確実に根付き始めているのを感じます。私自身も大変関心があります。モルトフィナンシェも、その流れの中で生まれたお菓子のひとつ。そこには、産物豊富な地域のものづくり精神が息づいています。
未来へつなぐ、やさしいサイクル

食べ終えたあとに残るのは、「おいしかった」という満足感とともに、「様々な形で地域を支えることができるんだ」という小さな実感です。美味しさの裏にあるストーリーを知ると、より味わいが一層深くなる。モルトフィナンシェは、まさにそんなお菓子です。
身近なスイーツから、社会の仕組みを少しずつ変えていく。そんなやさしい循環が、これからも広がっていってほしいと願います。伊勢角屋ビールの麦芽かすから生まれたスイーツが、食べる人の心にも温かな余韻を残す。それは、「もったいない」を「美味しくて、ありがたい」に変える、やさしい挑戦の形でした。正式に発売されるのが楽しみです。