整備された森や綺麗な道路、ゴミひとつない海岸など、当たり前のように思える光景の裏側には耐えまい努力が隠れているものだ。
三重県紀北町のキャンプ場「キャンプinn海山」では毎朝、「あるモノ」との戦いが繰り広げられていることをご存知だろうか。
おそらく、普段キャンプ場を利用しているお客さんのほとんどは知らない事実だろう。
これは２ヶ月の間、僕が実際に体験した戦いの記録である。
※.お食事中のかたは読むのをお控えいただいたほうが良いかもしれません。
キャンプinn海山の芝生が大好きな鹿から 嬉しくない贈り物
今日も清々しい朝がきた。季節は秋で木々の葉は色づきながらも、落葉が道に目立つようになってきていていた。芝生についた朝露は太陽の光でキラキラとしていてとても綺麗だ。
さて、「キャンプinn海山」には春夏秋冬を問わず、毎朝の日課がある。
「あちゃー、今日もまた多いわい。」
5m先を歩いていた田上理事長の声でキャンプ場に響く。（なるほど・・・今日も朝から一汗かきそうだな。）と僕は道具を持った両手の拳と気を引き締めた。
僕たちは毎朝「こいつ」を拾うことに悪戦苦闘している。
もう、あなたもお気づきかもしれないし、知らず知らずのうちに出会っていたかもしれない。
その正体は・・鹿のうんち、「鹿の糞(ふん)」だ。約2ヶ月間のキャンプ場で働いていて、最も馴染み深い仕事が「鹿ふん拾い」となったのは、正直に言って思ってもみなかった。
キャンプ場の鹿ふんを侮ってはいけない。鹿ふん拾いが大変な３つの理由
鹿ふんを拾うってそんなに大変なことなの？と疑問に思うかもしれない。もちろん、少しであれば大したことはない。ただ数が多くなるととても大変なのだ。
鹿ふん拾いが大変な理由①.直径約1cmサイズで拾いにくい
コロコロと小さいのが鹿ふんの特徴だ。一つ一つ拾うのは大変なため、落ち葉拾いで使う道具とちりとりを駆使する。感覚としてはおじいちゃんの背中を「孫の手」で掻いてあげるイメージだ。手早く芝生を鹿ふんごと掻くのがポイントとなる。
厄介なのが子連れの鹿たちだ。特に子鹿の糞は直径1cm未満で道具の隙間を見事にくぐり抜けてくる。子鹿は可愛いが、鹿ふん拾いでは大敵だ。
奈良公園で出会った鹿はこんなにも可愛いのに・・・
野生の鹿は憎たらしい。でも、何か凛々しい。
鹿ふん拾いが大変な理由②.バラバラに落ちてると厄介
鹿は一回で約100個程度のふんを排泄する。一箇所に留まっていてくれたらありがたいが、伸びたて美味しい芝生を食べるために鹿は縦横無尽に歩きまくる。
芝生を食べて→歩いて→ふんをする。また、芝生を食べて→歩いて→ふんをする。
あっちの方が美味しそうだ！と食べ歩きが活発な鹿が最も厄介でヘンゼルとグレーテルのように、１個ずつの「鹿ふんの軌跡」を作り出す。「コラ!ご飯はしっかり座って食べなさい。」と鹿ってやりたい(あれ・・・もしかして僕、上手いこと言っちゃいました？)。
鹿ふん拾いが大変な理由③.自然に溶け込み、見つけにくい
落ち葉や木の実、時には朝日と朝露を巧みに使って「隠れみの術」を繰り出す鹿ふん。
きみも鹿・・・ふん？
鹿ふんじゃない！
鹿ふん「おらたちがいってぇどこにいるか・・・おめぇーらにはわかんねぇだろ。」
・・・某アニメの主人公ボイスで憎たらしい鹿ふんの声が聞こえてくるようだ。
秋のキャンプ場は鹿ふんにとっていわばホームグランド。そして、僕らはアウェーになる。落ち葉も憎らしくなってきて、ブロワーの風で隅っこに吹き飛ばしてやりたい衝動を何とか抑えるのに必死になる。
キャンプ場の鹿ふん拾い境地「あれ、鹿ふんってもしかして綺麗じゃ・・・？」
しばらく鹿ふんを拾い続けている疲れと太陽の光が重なり、目の前の光景が美しいものだと錯覚？し始める。
（あれ、鹿ふんってもしかして・・・綺麗なんじゃないかな。）
だめだだめだ。あれは鹿の糞だ。間違っても綺麗だなんて感情を抱いてはいけない・・と開きかけた「鹿ふんは美しい説の扉」を全力で閉じる。
そんな時は「銚子川ブルー」と呼ばれる銚子川の透明な水面を眺めよう。冷静さを取り戻すはずだ。
キャンプ場での鹿ふんとの戦いを終えて
この日は大体バケツ１杯分くらいになった。
鹿ふんは、多い時にはバケツ３杯分になる時もあるのだから驚きだ。唯一の救いは鹿ふんは臭くないという点だろう。これで臭かったら毎朝めげていたに違いない。神よ、鹿ふんを臭くしないでくれてありがとう。
キャンプ場のこれからを考えると、農作物のように電気柵で対策する方法もあるが広いキャンプ場に設置するのは大きな決断が伴う。罠免許を取得して退治するか・・・奈良公園のように鹿と共生できたら理想だが非現実的だ。
ただ、朝から鹿ふんを拾う時間は案外、苦ではなかった。毎日でとても大変だが、無心で鹿ふんを拾うような朝の時間は必要だと思っている。
今日も世界中のどこかで「鹿糞闘」が繰り広げられている。生い茂った芝生を見かけたら、そこには同じように鹿ふんと戦っている人がいることを思い出してほしい。
そして、もし戦いの場に遭遇したら「鹿ふん拾い、お疲れさまです」と労いの言葉をかけてあげてもらいたい。それが戦士たちにとっての救いになるのだから。
山・川・海と三拍子揃ったオートキャンプ場 キャンプinn海山の紹介
| 施設名 | キャンプinn海山 |
| 住所 | 三重県北牟婁郡紀北町便ノ山271番地 |
| 宿泊料金など | ・コテージ（5人用）：10，000円～ ・オートサイト（1スペース）：1，500～3，000円 ・温水シャワー（有料） ・コインランドリー（有料） ・カヌーレンタル（1時間）：1，000円～ ・ハンモックレンタル（1日）：500円～ ・炭火焼ハウス：1，000円～ 【施設管理費別途要】 中学生以上の大人：1,000円 65歳以上のシニア：500円 3歳～小学生の子供：500円 |
| 内容 | （電話受付）9:00～17:00 テントサイトやコテージの空き状況確認はこちらから |
| 電話番号 | 0597-33-0077 |
| 公式WEB | キャンプinn海山公式WEB |
| 公式SNS 最新情報はこちらから | キャンプinn海山 公式Facebook キャンプinn海山 公式Instagram |
| 駐車場 | あり 宿泊利用者は無料、日帰り利用は有料 ※.夏のピーク時などは日帰りでの駐車場利用はできない可能性は高いです。ご注意ください。 |
| アクセス方法 | 紀勢自動車道 海山インターから車で約15分、道の駅 海山より車で約10分 |
| 備考 | 11月～3月までの水曜日は休業日あり。それ以外は年中無休。 |
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