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鳥羽のボラ漁のお話 時代の変化と忘れゆく郷土食の味わい

志摩郡誌 鳥羽誌 魚寅さん

鳥羽大庄屋かどやに飾られれていた絵には、当時の建物の様子が描かれていた。

明治30年代頃、鳥羽大庄屋かどやの真横は海だったそうだ。2020年(令和2年)現在には、想像もつかない。

鳥羽大庄屋かどや 明治30年頃の様子イラスト

鳥羽大庄屋かどや 明治46年の様子

昭和34年頃は、鳥羽市の生活道路 国道42号線の道幅は広くなく、海がもっと近かったという。鳥羽郵便局や三重銀行があるあたりには、伝馬船が停泊する入り江もあったそうだ。

そう話しをしてくれたのは、鳥羽市藤之郷で燻製や発酵の専門店 海童工房 魚寅の杉田公司さん(以下、杉田さん)。

私が事務所の拠点にしているkubokuriから徒歩約2分にお店がある。以前からの親しくさせてもらっていて、いつも話が面白い。

そんな杉田さんが、

鳥羽はボラ漁が盛んな町やったんよ。

と話す。

鳥羽といえば牡蠣やトロさわら、伊勢海老などが浮かんでくるが、ボラ漁?

と頭から「?」マークが生えてきて、もっと詳しく聞いてみる。

すると、これが想像以上に鳥羽の町に根付いた漁だったことを知った。

今は無き、鳥羽のボラ漁のお話に良ければお付き合いいただきたい。

鳥羽のボラ漁 戦後から高度経済前頃の話

海童工房 魚寅の杉田さん

杉田さん「鳥羽はね、ボラがとにかくたくさん獲れたのよ。安楽島橋あるでしょう、ミキモト真珠とくらいまでびっしりボラが入ってきたっていうのよ。一大生産地の漁場やったわけ。僕が生まれるより前の話やけども、あらみ小屋っていう魚群を見張る小屋があってね、そこで番屋が夜中につめとって、海の色が変わってくるとそれで人を呼んで、ボラきたぞーって、暖にあたりながらね。住民総出でボラを獲るわけよ。」

鳥羽なかまち あらみ小屋 看板3

鳥羽なかまち あらみ小屋 看板1

当時と場所は違うが、あらみ小屋の看板が鳥羽なかまちにある。ぜひ、探してみてほしい。

ボラ漁を手伝った住民は、大きなバケツにボラをもらって自宅で食べたそうだ。

当時の様子を思い浮かべると、何だか祭り騒ぎのような活気ある光景が流れていくる。

杉田さん「食糧難の時代には重宝されてたけど、高度経済成長の頃から海が荒れてね、ボラが臭くって食べられないってなってね。今では美味しいけれども、市場価値が下がって時代が変わってわざわざ食べるものでもなくなってしまったわね。」

杉田さんが生まれる昭和34年頃には、既に大規模なボラ漁は終止符が打たれていた。

実は海童工房 魚寅の「魚寅」は、杉田さんが燻製屋をはじめるより前、祖父や父親が営む魚問屋の屋号からとったそうだ。また、祖父や父親はボラ漁で一山当てた人物でもある。

鳥羽「市営船乗り場」

杉田さん「当時は木造の船でね、おじいさんが高速のモーターを最新の買ってきて付けたのよ。それで漁師が船で漁をしてから、市場で売るのを待っとったら取引負けちゃうわけ。それで、高速船で旗立ててね、例えば浦村の辺りまで船で行って漁をやってる漁師さんと直接交渉してお金を出してそこでもらってくるわけよ。それで1日の量として何トンとかそんな単位で仕入れていってね。夜中から明け方まで処理するのに、毎日のようにそういう作業してたっていうわけだからね。」

住民総出の漁に、時代が変われば船が群雄割拠する漁と仕入れの光景。

願っても叶うことはないが、一度その光景を見てみたいものだ。

鳥羽のボラ漁 歴史にも記述されているお話

志摩郡誌 鳥羽誌 魚寅さん

杉田さんは自分が住む鳥羽の町の歴史を調べる趣味を持っている。亡くなられた方から譲り受けた志摩郡誌(鳥羽誌)の記述を見せてもらった。

そこには、鳥羽藩が財政を悪化させてボラ漁で賄ったという記述がある。

志摩郡誌 鳥羽誌 ボラ漁の記述

安土桃山時代、鳥羽を統治していたのは戦国武将 九鬼嘉隆。鉄甲船 日本丸を乗りこなし木津川口の戦いで大きな戦果をあげた。現在も鳥羽城跡をはじめ、九鬼嘉隆にまつわる場所が鳥羽市には多い。

海童工房 魚寅付近には、武家屋敷をはじめ、江戸時代には日本丸が停泊した船着き場があった場所でもある。

杉田さん「これこれ一挙に数十万匹を得ることもありって書いてあるでしょう。冬場になったらね、九鬼嘉隆が鳥羽城を築いたよりも遥か以前から同じ地形なわけだから、ずっとボラは獲れていたはずなのよ。

漁獲量の規模に加え、僕らが生きる時代がどれだけ急速に変化をしてきたかが実感できる記述でもある。

まさに激動の時代とは、言い得て妙なのかもしれない。

鳥羽のボラ漁 余ったボラで住民が作って食べた料理のお話

鳥羽大庄屋かどや ボラのぬか漬け5年もの2

鳥羽大庄屋かどや ボラのぬか漬け5年もの

杉田さん「ああ、ちょっと漬かりすぎとるけど、ボラのぬか漬けあるよ。本当は1年くらいやけど、5年もの。パクパク食べるものじゃないけれど、どんなんか食べるために持ってく?」

ボラのぬか漬けは、今でこそ鳥羽の住民に馴染みがなくなっているが、ボラが大量に獲れた頃の一般的な食べ物だ。

住民はボラ専用ぬか漬け用器に食べきれなかったボラを保存し、食していた。

海童工房 魚寅の真ん前にある鳥羽大庄屋 かどやには、ボラ専用ぬか漬け用器が展示されている。

鳥羽大庄屋かどや ボラ専用のぬか漬け用器2

鳥羽大庄屋かどや ボラ専用のぬか漬け用器

もちろん、杉田さんに教えてもらった。

いただいたボラのぬか漬けを手に、事務所があるkubokuriへ帰還する。

KUBOKURI1階 鳥羽ちゃんぽん花清水の清水ご夫妻にちょっと焼いてほしいとお願いしてみると、快く応じてくれた。

鳥羽大庄屋かどや ボラのぬか漬け5年もの 花清水さん焼き調理2

鳥羽大庄屋かどや ボラのぬか漬け5年もの 花清水さん焼き調理

鳥羽大庄屋かどや ボラのぬか漬け5年もの 花清水さん焼き調理3

「白身魚って焼くと白くなるのに、色ついたままやね。」と奥さん

・・・果たしてどんな味なのだろうか。

鳥羽大庄屋かどや ボラのぬか漬け5年もの 花清水さん焼き

さすがは5年もの。しょっぱくて、パクパク食べたら塩分過多になりそうだ。

ただ・・・美味い。乳酸発酵が進んでいる。旨味が増した身は糠の風味と合わせて咀嚼して飲み込んだ後も、美味しさの余韻が残った。

鳥羽の町 500m圏内をぐるっと回ったボラ漁を巡る物語。これにて、おひらき。

鳥羽のボラ漁のお話に登場したお店紹介

燻製と発酵の専門店 海童工房 魚寅

海童工房 魚寅 牡蠣の燻製オリーブオイル漬け 2

店名 燻製と発酵の専門店 海童工房 魚寅
住所 〒517-0011 三重県鳥羽市鳥羽4-5-1
定休日 水曜日
営業時間 9:00~17:00
電話番号 0599-26-4000
公式WEBはコチラから

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国指定有形文化財 鳥羽大庄屋かどや

鳥羽なかまち「鳥羽大庄屋かどや(旧廣野家住宅)」

店名 国指定有形文化財 鳥羽大庄屋かどや
住所 〒517-0011 三重県鳥羽市鳥羽4-3-24
定休日 火曜日(祝日の場合は開館) 年末年始(12/29~1/3)
営業時間 午前10時から午後4時まで(入館は3時45分まで)
電話番号 0599-25-8686
公式WEBはコチラから

鳥羽ちゃんぽんと鯖寿司 花清水

クボクリキッチン花清水  店内様子

店名 鳥羽ちゃんぽんと鯖寿司 花清水
住所 〒517-0011 三重県鳥羽市鳥羽3丁目30-27
定休日 日・月・火
営業時間 あり
駐車場 11時半~20時 ※.ラストオーダー 19時
鳥羽なかまち KUBOKURI WEBはコチラから

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